先日、葬儀の際に司会の方が「弔辞、弔電はどのタイミングでいたしましょうか?」という「常の」質問をして下さったのですが、手元には手書きの「葬儀式次第」を持っておられました。出典を伺うことはしなかったのですが、勉強熱心な方だと感心致しました。
ネットで「真言宗 葬儀」などと入力して検索しますと、葬儀関連の業者さんが、結構「葬儀式次第」を紹介されています。業者向けの何らかのソースからひっぱってきているのか、はたして、どこで調べたのだろうと不思議に思って見ています。
というのも、高野山真言宗の引導作法(葬儀のやり方)って、これというものが無いのです。一応「二巻疎(書)」というものが定本とはなっています。自分も最初の引導作法の伝授はこれを受けたのですが、あまり実践向きとはいえません。昔のように、たっぷり葬儀の時間、人数を確保できた時代のものだからです。
ですから、岩原先生の「便蒙 真言宗檀用経典」のような「略作法」次第が用いられているのが現状です。といっても、この次第そのものが昭和12年に書かれたもので、現在のような「一日葬」や職衆を呼ばずに導師のみで行う「独行葬儀」では、さらなる工夫が必要です。結果、葬儀式次第の種類は、導師の数だけ存在するといってもいいかもしれません。
僧侶が用いる引導作法次第をそのままご紹介するのは「越三昧耶」となりかねませんので、一般の方でも手に入る(?)「葬儀大辞典」にある葬儀式次第を紹介いたします。
葬儀式
① 洒水
② 加持供物
③ 三礼
④ 剃髪
⑤ 授戒
懺悔文
三帰
三竟
十善戒
三昧耶戒真言
◎ 真言宗の方ならば、日々の勤行でおなじみのものです。
⑥ 戒名授与
※ 職衆がいる場合、前讃→理趣経
⑦ 表白
◎ 表白とは、法要の趣旨や所願を宣べるものです。
ここでは当然、故人の成仏を願う内容になります。
⑧ 神分(文)
◎ 様々な仏様がおいで下さったことに感謝して、仏名を唱
えて故人の成仏をお願いします。
⑨ 教化
◎ 即身成仏できるように、おいでになった仏様と共に故人を
教え導きます
⑩ 引導
引導の印明
※ 職衆、一時読経を止める
◎ ここで授ける印明も人によってこだわりがあるので色々あ
るみたいです。
⑪ 破地獄印明
⑫ 五鈷杵授与
⑬ 両部秘印明
⑭ 大師御引導の大事
◎ ⑫⑬⑭は密教僧が阿闍梨になる儀式である伝法灌頂のクラ
イマックスを再現しています。
⑮ 開眼
⑯ 血脈授与
◎ 大日如来よりはじまる師資相承の血脈に連なった証を
授与します。
⑰ 六大印明
⑱ 偈文
※ 脇導師、焼香して唱える
⑲ 諷誦文
◎ 故人の生前の功績や徳などを讃えて成仏を願います。
⑳ 弔辞・弔電
㉑ 参列者焼香
※ 読経再開
㉒ 後讃
◎ 声明です。自分は葬儀でのご本尊である不動明王を讃
える曲「不動讃」を選んでいます。
㉓ 読経
陀羅尼、真言等
㉔ 祈願
㉕ 最極秘印
◎ またまたこれも人によって様々です。
㉖ 出棺
自分は、この次第ではやっていません。順番が異なっていたり、省いたり、逆に付け加えるものがあったりです。
僧侶は、故人様にちゃんと成仏していただけるように工夫をされています。最近では参列者の方にも意味を解ってもらえるよう、文言を加えたりする方もおられます。
よく「葬式仏教」「葬式坊主」などと侮蔑的に表現されることがありますが、自分はプライドをもって全力で「葬式坊主」をしています。
真言宗の葬儀の趣旨や目的については別の機会にお話しいたします。