歴史と伝統 特別な一年、一日

 みなさん、あけましておめでとうございます。

 

 昨年は阪神タイガースフィーバーで終わりました。「ARE」も流行語大賞でした。

 やはり38年ぶりの日本一というのは、特別感があります。

 おかげで、タイガースの懐かしい話がたくさん出てきました。

 

 プロ野球ファンでない方でも覚えておられるのは「江川騒動」ではないでしょうか。

 阪神がドラフト一位で江川さんを指名したのですが、巨人に絶対行きたいということで入団拒否。結果、一旦阪神に入団したことにして、巨人とトレードという形をとりました。

 そのとばっちりを受けたのが、巨人から阪神にやってきた小林繁さんでした。

 そんな小林さんに、掛布さんが「伝統あるチームから伝統あるチームにやってきましたね。」みたいなことをおっしゃったところ、「阪神は巨人と同じく歴史はあるが、伝統はない。」と返されたそうです。

 掛布さんは、当時は腹が立ったそうですが、のちに少し意味が分かった、というようなこともおっしゃっていました。

 

 なるほど、「歴史」と「伝統」は類義語ではありますが、同義語ではないです。

 歴史は時間の経過とともにオートマチックに作られていくものですが、伝統は人の思いや行為が伴ってはじめて作られていくものです。

 

 来年、西山寺は開山1200年を迎えます。1200年の歴史があるわけです。

 その間には、戦国時代の戦渦に巻き込まれて火災にあったり、地滑りによって破壊されたこともあります。

 それでも法灯が守られてきたのは、歴代の住職や僧侶、支える檀信徒がいたからです。建物こそ江戸自体の再建ですが、平安時代のご本尊がいらっしゃるのは、火の中に飛び込んで、命がけで守った先人たちの思いによるものだと思います。こうやって守られてきたのが、密教道場としての西山寺の伝統です。

 来年の1200年を機に、また新たな伝統を紡いでいくことができればと存じますので、ご協力をお願いいたします。

 

 これらのことは、歴史や伝統といった長いスパンの時間に限られないと思います。

 

 何もしなくても一日は過ぎ去ります。

 日曜日にぼーっとして過ごしていたら、気が付いたらテレビではサザエさんなんてことは皆さんも経験があるのではないでしょうか。

 

 一年でも同様です。自分も、年を取るにつれて、カレンダーの残り枚数が減るスピードが加速しているような気がします。

 

 何事もない、記憶に残らないような一日、一年というのも「平穏無事」だった証であるので感謝すべきかもしれません。しかし、せっかくなら、思いの詰まった特別な一日、一年を目指したほうが面白くはないでしょうか。

 そのためにも、健康と少しの運くらいは必要かと思います。

 

 今日の星まつりが、皆さんの特別な一年の手助けになるよう祈念しております。

 

※ 令和6年 新春星まつりでの法話に加筆修正したものです。