住職の日記

仏教は哲学ではない

お寺にいますと、檀信徒以外の方から、色々な質問を受けることがあります。 先日は、電話にて「ふきょうし」になりたいとの相談を受けました。 どうやら高野山真言宗の「本山布教師」のことのようです。高野山内の金剛峯寺などで布教をする僧侶のことです。…

涅槃図 2024

今年も2月の間は涅槃図を展示しています。 お釈迦さまが入滅されたのは、はっきりした年代は争いがありますが、紀元前5世紀ころの2月15日とされています。 そのことから、お釈迦さまへの報恩の意味で涅槃会を執り行うお寺も多いです。拙寺でも、派手な…

人間の矜持

今年は新年早々、大変なことになっております。 今日の護摩の祈願でも触れておられる方もいらっしゃいましたが、能登地方の震災のことです。 それだけでも辛いのに、さらに心が痛いのは、火事場泥棒のような輩が現れていることです。日本人のレベルもここま…

歴史と伝統 特別な一年、一日

みなさん、あけましておめでとうございます。 昨年は阪神タイガースフィーバーで終わりました。「ARE」も流行語大賞でした。 やはり38年ぶりの日本一というのは、特別感があります。 おかげで、タイガースの懐かしい話がたくさん出てきました。 プロ野球ファ…

加行? はい 喜んで!

何回か触れている話ですが、自分たち真言僧が行者としてスタートラインに立つためにはまず「四度加行(けぎょう)」という修業をする必要があります。 「四度」という名称の通り、通常4ブロックに内容が分かれます。自分が高野山で行ったのは「中院流」の加行…

見えないとダメですか

ネット記事で少し前に読んだものなので正確ではないですが、こんな話がありました。 ある方が新築パーティーを開かれたそうです。会社関係や友人やらを呼んでワイワイやっていたそうなのですが、ある「見える」方が、調度品の一つを指して大騒ぎしたそうです…

「祈り」となるためには

先日、尊敬するご住職の法話を拝聴する機会がありました。その中でこのような話がありました。 「神仏の前で一生懸命お願いをするのは『祈り』ではありません。ただのお願いです。感謝の気持ちが伴って初めて『祈り』といえます。」 以前、後輩の僧侶が知り…

脇道を見る余裕を ~ 本当のタイパ

今年も残り少なくなってきました。 徐々に今年を振り返る、といった特集が組まれるようになってきますね。 その中に、流行語大賞や新語大賞でしょうかなんてものもありますね。 ところで、昨年の新語大賞の言葉を覚えておられますか。 「タイパ」、タイムパ…

修法は辛いものであってはダメ

自分も教えていただいたことのある高名な僧侶の方がこんなことを書いておられました。 「人のために祈って、施主さんが救われるのはもちろんだが、代わりに自分が疲れてしまうような人は、行者に向いていない。」 自分が、高野山で、「加行」という修業の途…

御礼肥え ~感謝で大きな花を咲かす

秋になり、夏に咲き誇ってくれた蓮たちもほとんどが枯れてしまいました。 枯れてしまったから世話は終わりというわけではなくて、今は「御礼肥え」の時期です。 いらしている中には、農家の方もいらっしゃるので、自分が説明するのも気恥しいですが、御礼肥…

盲亀浮木のおしえ

先日、三回忌をした方たちのお話です。 故人様の息子さんが俳優さんなのですが、最近では演出や監督もされているとのこと。 そして、「もうきふぼく」という舞台の演出をされたとのことでした。 ひらがな表記なのは、志賀直哉原作の作品と区別するためだった…

施餓鬼の話 2023

毎年、同じような話になってしまいますが、ご容赦ください。 法要の中で、ご先祖さん方の供養を祈願する部分に気づかれた方は多いと思います。 そして、それと合わせて皆様の福徳を祈願していたことにも気づかれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 お…

よく見て よく聞き よく生かす

この中にもいらっしゃいますが、先日高野山に団体参拝に行きました。 高野山では「案内人さん」が案内してくださいました。今回は、自分が高野山 で役僧をしているときからお世話になっている大ベテランの方でした。 案内人さんも色々な方がいらっしゃいます…

離乳食だけでは・・・

先日、新義真言宗の本山である根来寺さんにお参りしてきました。 そこで、たまたま知己のお坊さんと再会しました。 その方と初めてお会いしたのは10年以上前に受けた高野山大学での伝授でした。 自分にとっては、少し歯ごたえのある内容で、伝授阿闍梨さん…

憧れるだけではなく

皆さんもまだ覚えておられるかと思います。WBCでのアメリカとの決勝戦を 前に、大谷選手がチームメイトにこのように言ったそうです。 「(対戦するアメリカのスーパースターたちに)憧れるのはやめましょう。憧れて いる限り、乗り越えることはできません…

光明真言の唱え方

ときどき、「こんな真言を唱えてもよいですか?」という質問を頂くことがあります。 いわゆる「在家勤行次第」などの、在家の方向けの経本に載っているものなら ば、まったく問題が無いのかもしれません。 しかし、僧侶向けの経本にしか載っていないものであ…

令和5年 花まつりの話 

今日は花まつりです。 すでに玄関にいらっしゃったお釈迦様に甘茶をかけてくださった方もいらっしゃると思います。 お釈迦様は、覚りを開かれた方ですが、ゴーダマ・シッダールタとして生を受ける前、前世において様々な徳を積まれてきたとされます。 今日は…

真言宗の「成仏」とは

毎年、御影供の由来をお話しするのも芸がないかと思います。 そこで、今日はほかの寺の檀家さんから、真言宗ってどんな教えなの?と聞かれたときに、お話していただけるような、真言宗の特徴みたいなものを紹介したいと思います。 「成仏」 一般的には、文字…

みんなお大師様の名代 ~ 転衣式に参列して

昨日(令和5年3月7日)、高野山での転衣式に参列してきました。 転衣式とは、高野山にて弘法大師の名代をつとめる法印職に就任したことを披露する儀式です。このたび、蓮華定院の添田大僧正がその職に就くこととなり、この晴れの式に参列する機会を得ました…

「大師教」から「真言宗」へ

都会では、火葬場が巨大ですので、他の宗派のお坊さんとバッティングすることが一よくあります。衣や袈裟を見ればある程度、どこの宗派の方か分かりますが、お経を聞くとより分かりやすいです。 浄土真宗なら「南無阿弥陀仏」(但し、天台宗などでも念仏をお…

友とするにわろき者

伝聞ですので、正確ではない話です。 ある宗門大学での修士論文の発表会でのこと。ある社会人コースの院生の方のテーマが「現代ビジネスに活かす弘法大師の言葉」とかいったものだったそうです。 結果、講評を下さった教授方たちの反応はいまいちだったよう…

高野山の魅力

今日は、自分の高野山でのとりとめのない話をさせていただきます。 高野山には117の寺院があります。 しかし、行かれたことのある方は、そんなに寺があったかなと思うかもしれません。 実は、一つのお寺の中に、二つ三つのお寺が併存しているからだったりし…

「僧侶的生き方」とは ~「密厳院発露懺悔文」

先日、とある方からメールにて「僧侶的生き方」とは何か、という内容の質問をされました。 浅学菲才の自分なりに、一生懸命考えて回答したのですが、その後はなしのつぶて。 あまりのレベルの低い内容に失望したのか、求めていたものと異なっていたのかわか…

弔問外交? ~ いろいろな葬儀

最近は、家族葬というのが増えてきました。 以前は、100人越えの弔問客が押し寄せる葬儀が普通でした。 ときには通夜で、全員の焼香が終わらないため、葬儀社さんから「伸ばしてください」と書かれた紙をそっと渡されて、延々とお経をあげたなんてことも…

釈迦に説法

年頭から、愚痴をお許しください。 ごくたまに「お経、上手ですね。」と言われることがあります。 その後、おっしゃった方は失礼なことを言ったのかと恐縮されたりします。 たしかに、プロ野球選手に 「野球、上手ですね。」 と声をかけるのはナンセンスかも…

現世利益 上等!

最近では、宗教と科学が水と油の関係のようなものではなくなってきたように思います。自分の知っている方の中にも、科学者から僧侶になった方がおられますし、生死にかかわる職業だからなおさらなのでしょうか、医師でありながら僧侶という方も珍しくなくな…

うさぎ年のおはなし

みなさん、あけましておめでとうございます。 今年はうさぎ年、そしてお子様連れの方もいらっしゃるので、こんなお話をしたいと思います。元ネタは『ジャータカ』とい仏教説話です。 むかし、ある森の中でうさぎとさるときつねが仲良く暮らしていました。 か…

理趣経灌頂

先日、理趣経灌頂を受けてきました。 最近、似たような記事を読んだぞ、と思われたかもしれません。 先日の記事は「毘沙門灌頂」でした。今回は理趣経灌頂です。 灌頂とは仏さまと強いつながりを結ぶ儀式ですので、色々な場面で受けることになるということは…

自力?他力?

高野山では仏さまも神様も仲良くしています。 たとえば、加行という修業が終わると、奥の院のお大師様に報告に行くのは当然ですが、お大師様に高野山を譲ってくださった神様のいらっしゃる丹生津姫神社や立里荒神さんにもお礼参りをします。 自分が立里荒神…

毘沙門灌頂 ~ 二密ではダメ

もう寅年も終わりですね。 うさぎさんが、ウォーミングアップを始めていることでしょう。 寅年限定のイベントとして、奈良県にある信貴山にて毘沙門灌頂が行われ、自分も受けてまいりました。 「灌頂」については今までも何度かお話してきました。 もともと…