薬師如来①

わたくしどもの寺のご本尊は薬師如来です。

真言宗の寺院なら、密教の根本仏である大日如来がご本尊であるのが自然と考えるかもしれませんが、実際には違う仏様が本尊の寺の方がほとんどです。高野山には117の塔頭がありますが本尊として一番多いのは阿弥陀如来だと聞いております(自分がいた寺もそうでした)。

真理そのものである、という崇高すぎて掴みどころのない大日如来よりも、分かりやすい「効能書き」のある仏様の方が人気だったせいかもしれません。たとえば、必ず極楽往生を約束してくださる阿弥陀如来であったり、現世利益を約束する観音様を本尊とするお寺は非常に多いです。そして病気に効果てきめんという薬師如来もご本尊として人気の仏様です。

浄土系のお寺なら、まず阿弥陀如来が本尊であるのに対して、真言宗のお寺ではバラエティに富んだご本尊様がいらっしゃいます。曼荼羅にはたくさんの仏様がいらっしゃいますし、大日如来はすべての仏様の本地ということを鑑みると、特に問題はないように思えます。ところが、薬師如来両界曼荼羅の中にいらっしゃらないのです。身近な仏様の割にはあまり多く語られていないお薬師様について、今後少しずつお話していければと思います。