生前戒名

先日、遠隔地にお住まいで、生前戒名をお授けした方が寺においでになりました。改めて戒を授けるとともに、先祖供養の法要をさせていただきました。

仏法僧に帰依すること、不殺生戒をはじめとする十善戒を守ることを誓っていただきました。

守れそうにもない戒を仏様の前で誓うことに抵抗を感じる方も有るかもしれません。また破ってしまったときにはとんでもないことになるのでは、と恐れを抱く方もいらっしゃるかもしれません。そんなわけで、今回はこんなお話をさせていただきました。

 

昔、すごく守備の上手い野球選手がいたそうです。普通の選手なら取れないような打球も上手にさばいてアウトにできたそうです。しかし、取れそうにない球が飛んできたときは、一切取ろうとしなかったそうです。あるとき、監督やコーチがそのことを注意したところこのように言ったそうです。「たしかに取れそうなボールなら追いかけて取りますよ。でも取れないボールを追いかけても無駄じゃないですか。ましてや飛びついて怪我でもしたらチームに迷惑がかかるんじゃないですか。」と。

 

みなさんはどのようにお考えになられるでしょうか。なるほどその選手の言うことにも一理あるでしょう。しかし、私たちはそんなすました選手よりも、取れないようなボールにも飛び込む、間に合わない塁にも頭から滑り込んでユニフォームを泥だらけにする選手に感動するのではないでしょうか。

私たちもどうせ戒律なんか守れないし、ましてや覚りをひらくなんて到底無理だしといって何もしないのではなく、どうにか仏に近づこうと発心することが大事なのであり、それこそが仏様方が喜んでくださることなのではないでしょうか。