護摩の楽しみ方

今日は土曜日ということもあり、沢山の方にお参りいただきありがとうございます。

いつも来てくださる方の中には、大分目が肥えて、この作法が始まるとそろそろ終わりかなとか、今日はいつもより火の勢いが無いな、なんて思われる方もいらっしゃるかもしれません。一方で、初参加の方もいらっしゃいますので、護摩の簡単な流れをお話いたします。

護摩といえば、火の上がるところをイメージするでしょうが、その前の「準備」の方が大変かもしれません。

密教での仏様の供養の仕方は、インドでお客様を接待する様子を表現しています。

阿闍梨になるための修行である四度加行(けぎょう)の最初に学ぶのが、この一番基本となる十八道加行というものです。これは文字通り、供養を十八のプロセスで行います。すべてを紹介するのも大変ですので大きく六つのブロックに分けて説明いたします。

一、荘厳行者法

   いわゆる護身法です。護身法というと自分の身を守る、というイメージを持つでしょうが、お客様たる仏様をお迎えするにふさわしく身を整えるという意味もあります。

二、結界法

   VIPたる仏様にお越しいただくのにふさわしい場所を設えます。土地をならし柵を巡らせます。

三、荘厳道場法

   さきほどはエクステリアだったのに対して、今度はインテリアです。仏様をお迎えすべく豪華な飾りつけや、供養の品を用意します。

四、勧請法

   会場の準備が整いましたので、いよいよ仏様を迎えます。車でお迎えして、玄関まで出て、ご案内します。

五、結護法

   会場に悪魔のような「招かれざる客」が入り込まないように、周囲を封鎖してしまいます。

六、供養法

   お客様の足を洗い、席を用意していよいよ供養します。

 

「身五 結二 道場二 請三 結三 供養三」と覚えなさいと習いました。

それぞれのブロックごとにに五つ、二つ、二つ・・・と印を結び、真言を唱え、全部で十八道というわけです。

普段自分のやっている、特定の仏様を供養する「諸尊法」等では、この十八道をベースにして、もう少し別のプロセスを加えた「別行立て」というもので修法しています。

 

では、護摩はというと・・・

供養の部分がもっとゴージャスになったものと考えればよいと思います。

普段でしたらお茶とお菓子位だけなのが、護摩だと満漢全席のフルコースをご用意して仏様をもてなす感じです。炉が仏様のお口です。今日も色々なものを召し上がっていただきました。そして皆さんはそんな饗応の席に同席させてもらっていたのです。

そんな素晴らしい場所にみすぼらしい格好でいては申し訳ないですよね。ですから百八本の護摩木とともに煩悩を焼き払い、お経や真言を一緒にお唱えすることで心の塵を取り除いてもらいました。そして、心の中にいらっしゃる仏様を顕現させることで、皆様にも仏様の仲間として宴を楽しんでもらったわけです。

 

ですから、護摩は見ているだけではもったいないです。参加するものです。無心にお経を唱え、真言を唱え、音、火の熱、香り、太鼓の振動等、五感を通じて日常でこびりついた塵を吹き飛ばすのだと思っていただければよいのではないでしょうか。

 

※令和2年2月薬師護摩法話から抜粋、加筆いたしました